アパレル大手の東証一部上場企業である、レナウンが
5月15日、民事再生法の適用を東京地方裁判所に申請しました。
負債総額は138億円余りで、今後、裁判所の選んだ管財人のもと、
スポンサー探しなど建て直しに取り組むことになります。
コロナ禍はきっかけに過ぎず
新型コロナウイルスの感染拡大防止のために、
緊急事態宣言が出され、レナウンの主要販売先である
百貨店やショッピングセンター、GMS(総合スーパー)
などが営業自粛するといった影響は、
確かにとても大きかったかと思います。
しかし、コロナ禍は、あくまでもきっかけに過ぎないと思います。
たとえコロナ禍があっても無くても、
時代の変化に対応することができずに、抱えてきた問題を、
放置して先延ばししてきたツケがまわってくるという部分で、
コロナショックにより、一気に問題が顕在化するという
側面もあるのだと、自分は思います。
かつてのアパレルトップ企業に何が起きたのか
かつて、1980年代には売上高2,000億円を超えていたこともある
レナウンは、バブル崩壊以降、主力販路の百貨店の販売不振や、
ユニクロ、しまむら、ZARAといった、ファストファッションの台頭で、
消費者のライフスタイルの変化に対応することが出来ていませんでした。
2019年2月期決算では売上高636億円まで売上を落とし、
最近の日本国内のアパレル業界の売上ランキングは、
1位 ユニクロ
2位 しまむら
3位 青山商事
4位 ワールド
5位 オンワードHD
と続き、
レナウンは大きく後退して、18位にランクされています。
業界動向SEARCH.COM
アパレル業界 売上高ランキング トップ10(2018 – 2019年)
https://gyokai-search.com/4-apparel-uriage.htm
加えて、アマゾンや、楽天、ZOZOTOWNなどのECサイトで
アパレル商品を買物するユーザーもだいぶ増えており、
その影響も大きいでしょう。
しかしレナウンのEC・通販チャネルの売上は、
全体のわずか3.2%しかありません。
レナウン2019年決算概要 P,08 チャネル別構成比
https://www.renown.com/ir/account/201912/b20lp00000016zu4-att/b20lp00000016zv2.pdf
9割以上を百貨店やGMSなどの実店舗での販売に頼っていたレナウンは、
コロナショックで、大打撃を受けざるを得なかったとも言えます。
かつての成功体験が足かせとなる
レナウンは、かつてのゴルフブームに乗じて、1969年には
傘のマークの、「アーノルドパーマー」で大ヒットを飛ばしました。
また、1971年には「ダーバン」を売り出し、これもヒットさせました。
しかし、その後 1990年に200億円で買収した、
英国の名門ブランド「アクアスキュータム」はうまくいかず、
以降は、競争力を落としていきます。
そして、2009年に「アクアスキュータム」を売却した後、
2010年に、中国山東省の繊維メーカー、
山東如意科技集団の出資を受け、
2013年にはその子会社となりました。
レナウンは、「アーノルドパーマー」や「ダーバン」のような、
昭和の時代に大ヒットしたブランドに続くヒット商品を
その後生み出すことが出来ず、平成時代は、
過去の遺産で存続してきたとも見受けられます。
そして、助けをもとめた中国の山東如意科技集団も、
決して順調でもなく、苦境に立たされているようです。
それだけではなく、その山東如意科技集団の、香港の子会社から
売掛金回収が滞り、そのことがレナウンの2019年12月期の
2期連続の最終赤字の大きな要因となったようです。
会社は再生を希望している
レナウンは、民事再生法の申請をしたということで、
現状の経営陣のままで、事業を存続させる道を模索していくようです。
いまだに同社のメインブランドとなる「アーノルドパーマー」に
今後も大きな将来性が期待できるかどうか、
それ以外に何か期待の持てる長所が無ければ、
スポンサーのなり手を募るのも苦戦が予想されます。
また、親会社の山東如意科技集団と関係がうまくいっていない向きもあり、
民事再生の手続き停止をもとめてくる可能性も否定できず、
法的手続きがうまくいくかどうかは、課題山積のようです。
そのビジネスモデルのままでいいのか
そもそも、レナウンの販路の55%を占める百貨店自体が、
このコロナ禍で大きなダメージを受けており、
仮に民事再生が受け入れられ、存続が決まったとしても、
いまのビジネスモデルを変えることなく、
ユニクロなどファストファッションとの差別化がうまくいき、
本当の意味でV字回復し、黒字経営が成り立つのか、
という問題も残っています。
私たちは、誰もが聞いたことのある一部上場企業でさえ、
このようなことになってしまうことを肝に銘じて、
自分のいる企業や、業界が今どういう状況にあるのか、
冷静に見つめ直すことが必要なタイミングだと思います。
お客様は誰なのか、どう変わってきているのか?
競争相手は誰なのか?どんな強みがあるのか?
自社はどういう強みがあるのか?自社が選ばれる理由は?
このような問いかけを自らに定期的に課して、答えていき、
自社の事業領域を見直し、戦略の立て直しを
検討していくべきだと思います。
まとめ
アパレルの一流企業である、レナウンが民事再生法の手続きに入りました。
新型コロナウイルスの緊急事態宣言による店舗の営業自粛が、
大きく影響したと考えられますが、
実は、コロナ以前から、不調の兆しはあり、
時代の変化に対応せず問題を放置してきた結果であると思われます。
コロナショックでは、以前から抱えてきた問題を、顕在化する側面があり、
誰もが自分のいる企業、業界のビジネスモデルについて
定期的に見直す必要があるタイミングだと思います。