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書評ブログ「テクノロジー4.0」

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「テクノロジー4.0」大前研一著 KADOKAWA

著者紹介

「ボーダレス経済学と地域国家論」提唱者。

英国エコノミスト誌の1993年グールー特集では世界のグールー17人の一人に、

また1994年の特集では5人の中の一人として選ばれている。

(株)ビジネス・ブレークスルー 代表取締役会長

ビジネス・ブレークスルー大学、および大学大学院の学長

テクノロジー4.0とは

テクノロジー4.0とは、一般に言う第四次産業革命のことで、

産業革命とは技術革新に伴う産業上の変革のことです。

手工業から、蒸気などを使った工場の機械化へと移行した、

テクノロジー1.0。

軽工業から重工業へと、工業化による大量生産時代へと移行した、

テクノロジー2.0。

コンピュータが登場し、デジタル革命とも呼ばれる、

通信・インターネット革命による、テクノロジー3.0。

そして今起きているのが、その次にあたる

テクノロジー4.0で、これについて、詳しく解説されたのが本書となります。

産業革命のたびに、我々の暮らしはガラッと大きく変わってきました。

本書はまさに今、我々は歴史の端境期にいることを

実感させてくれる内容となっています。

テクノロジー4.0とは、デジタルコンチネント(大陸)における情報革命であり、物流革命であり、生産革命であり、企業競争上の革命でもある

「テクノロジー4.0」大前研一著

まずテクノロジー4.0の背景としての、

以下の4つの要素を理解する必要があります。

リアル(実体)経済

ボーダレス経済

インターネットによる見えない大陸

マルチプル

①のリアル経済は従来まで我々が買物などで関わってきた

リアルの経済となります。

②のボーダレス経済では、ヒト・モノ・カネが国境を越え、

世界最安地でモノをつくり、最も高く買ってくれるところに売る。

ということが可能になり、消費者はいいものが安く手に入るようになりました。

結果、世界規模での収益の最適化が起こり、

一国内だけでの繁栄が成り立たなくなりました。

③のインターネットによる見えない大陸は、

デジタル化の更なる進化により、舞台は

サイバースペース(仮想空間)へと移り、

そこでは、Googleやアマゾンのような企業が、台頭しました。

そして更に、スマホ決済により、中国のアリババ、テンセント

といった企業が巨大企業へ急成長しています。

④のマルチプルは、現在の株価が今年の収益の何倍なのかを示し、

マーケットで企業価値がいくらに見られているかを表す指標で、

いわゆる将来の期待収益で株価が何十倍、何百倍と

上がったマルチプルの高さを利用して、小企業が、大企業を買収すること

さえ可能となるということです。

以上が、テクノロジー4.0をつくり出す4つの要素ということで、

まずここを押さえておく必要があります。

一つの技術を知るより「全体を俯瞰する視点」を持て

テクノロジー4.0では、一つのテクノロジーを詳しく理解するよりも、

それぞれのテクノロジーのつながりを俯瞰する視点が重要だと解説しています。

位置情報、ビッグデータ、ドローン遠隔作業・撮影、

フィンテック(ブロックチェーン、ビットコイン)、AIの、

これら全てを理解した上で、これらの組み合わせで

どんなイノベーションが起こせるかが重要になると言います。

特にスマホアプリを使ったタクシー配車サービスのUber社は、

テクノロジー4.0の申し子であると、紹介しています。

テクノロジーを駆使することで、既存のタクシー会社よりも、

車両を持たないUberの方が、操業度が高く、

おまけにドライバーの給料も高い、ということが起きています。

更にスマホ決済で、ドライバーの手元にキャッシュがないから

強盗に襲われることがなく、既存のタクシーよりも

安全性まで保たれるということで、従来から築き上げてきた

タクシー産業そのものが、引っくり返されるようなことが起きています。

逆にこれらのテクノロジーを組合わせて

既存のビジネスを変革するようなアイデアを打ち出すことが出来れば、

Uberの事例のように、大きなチャンスを手にすることが

可能ということですね。

「スマートフォン・セントリック」とは 

テクノロジー4.0を理解する上で重要なのが、

今の世界では全てのテクノロジーはスマホに集約されており、

このことを「スマートフォン・セントリック」といいます。

国境が無意味になり、スマホ上では、もはやiOSとアンドロイドの

二つのプラットフォームしかない世界で、テクノロジー4.0の企業は

これを利用してサービスを容易に世界中にまき散らします。

そこではカントリーリスクも無く、多国籍企業である必要も無く、

誰がどこにいても関係ない。

そこでビジネスを展開するための一番の基本として、

スマホのネットワークをよく理解することが重要だと指摘されています。

確かに、カメラ、ビデオ、音楽プレイヤー、パソコン、位置情報、

他にもあらゆるセンサーが、スマートフォン一台に全て搭載されています。

このスマホのエコシステムに便乗出来れば、あらゆる投資や時間が節約でき、

思いつくことのほとんどが実現できるのではないかと思います。

テクノロジー4.0で「新しい格差」が生まれる

テクノロジー4.0の世界では、エスタブリッシュメントがない途上国は

テクノロジーが浸透しやすく、逆に、古いやり方に慣れていると

なかなか新しい仕組に移行しにくいという現象が起きていると

著者は指摘しています。

まさに、中国で急速にスマホ決済が発展したのは、

日本のように紙幣の信頼性がなく、クレジットカードが浸透していないことで、

これらの過程をスキップすることで、中国はあっという間にスマホ決済の

先駆者として駆け抜けたということがあると思います。

日本は、長い間に改善に改善を重ねながら、既存のクレジットカードや、

紙幣にこれほどまでの高い信頼感を構築してきました。

今も新札発行などに時間を奪われています。

そういった過去の成果があるからこそ、中国のこういった

ショートカットしながらジャンプアップしていく動きに

なかなか追いつけなくなっているように感じます。

すなわち、日本のように、進化の過程を積み上げてきた側が、

そのレガシーが足かせになってしまい、新技術に素直に移行できずにいる中で、

それらのしがらみがない途上国が、最短最速で最先端技術を取り込んでしまう。

優勝劣敗が、大きく入れ替わる大逆転の時代になったのだと理解しました。

この時代に生きる者として、まずテクノロジーを柔軟に受け入れることが

重要になってきます。

例えば、いち早くUberを使って、Airbnbで宿泊先を探すといった

昔と違う行動をすぐに取り入れられる人と、

それが素直に出来ない人とで、コストが4倍ほど開くこともある、

と著者は指摘しています。

このように、ITの恩恵を受けれらる人と受けられない人との間に

生まれる経済格差、情報格差を「デジタル・ディバイド」というそうです。

技術や新しいサービスはどんどん更新されていくので、

今の最先端テクノロジーではどこまで実現可能なのか、

どんな組み合わせが出てきているのか、定期的に世の中全体を俯瞰し、

アンテナを張っておくことが非常に大事だと思います。

フィンテックとは

フィンテックとは、ファイナンス(金融)とテクノロジー(技術)を

融合させた造語で、ここにきてブロックチェーンやビットコインの技術が

開発されたことも、フィンテックに注目が集まる理由です。

その本質は、国家がつくり出してきた「通貨」という概念が

不要になる程であると、著者は指摘します。

FinTechを理解するための「4つの原理」

なぜFinTechが画期的なのかを理解する、4つの原理があります。

①価値があるものは何でも貨幣と置き換えて考えられる

②価値は時間の関数である

③通貨に依存しなくても、スマホのエコシステム(生態系)を使うと、

ほぼ瞬時に世界のどこでも誰とでも取引できる。

④①~③の3つの原理を実行するために必要な信用を

サイバ―空間で提供するものが、国家や金融機関に取って代わる。

FinTechが信用を提供する。

これらによって、国家が発行する通貨を前提にしない

「信用の創造」が出来る時代が到来したと言える、

画期的なテクノロジーがフィンテックなのです。

Fintechの本質と4つの原理を理解すれば、

いくらでもビジネスを拡大させることができ、

大きなビジネスチャンスになる、と著者は言及しています。

日本が、新しい紙幣を準備して、匠の技術でいかに偽造困難で

安全な紙幣にするか、とやっていますが、

もはやそういういたちごっこの次元ではなく、

仕組として安全が担保され、様々なビジネスへと応用ができる、

大きな可能性をもつテクノロジーなのだと思います。

位置情報を利用したサービスの進化

位置情報を利用して気象情報を提供するウェザーニューズ社の

事例紹介があります。

既存の環境観測センサーに加え、ユーザー参加の気象体感データを収集し、

それらに気象庁の観測データや独自観測データを合わせて解析することで、

詳細エリア別のローカルで詳細な気象情報が提供できています。

また、測位を重視した広告や、店への誘導、レジの混雑情報、

公園にいてもピザが配達してもらえる等、

ロケーションは顧客のスマホ、という

GPS位置情報を活用した考え方がどんどん進んでいます。

小さく始めて、仮説検証を高速で繰り返せ

GPS登場から、位置情報ビジネスの市場規模は膨らみ、

今はビジネスモデル全体を見直す好機とのことです。

広告宣伝は、不特定多数に向けたブロードキャスティングから、

今ここにいるあなただけに向けた、ポイントキャスティングへと進化し、

医療の分野では遠隔診療も実現され始め、

そしてドローンのような、GPS技術の進化系デバイスが誕生しています。

もはや全てのビジネスが位置情報の影響を受けている、と著者は言います。

これらの技術を活かして、自社でビジネスを展開する為には、

まず技術トレンドを理解していなければなりません。

そして、ビジネスが実現可能となれば、

なるべく小さく始めて、仮説検証を高速で繰り返し、

プロトタイプ(試作品)作成へと進みます。

エンジニアや専門家など外部人材の活用もしながら、

十分な実証実験を行ったらスケールアップを展開していく、

といった、新ビジネス構築へのステップについても詳しく解説されています。

まだ、既存のビジネスにおいて、イノベーションが進んでいない業界などでは、

まず最新のテクノロジーで、今の自社の業界や自分の仕事に

イノベーションを起こせないか、徹底して考え抜いてみると、

大きなチャンスが埋もれているかもしれません。

IOTで業界勢力図が大きく変わる

IOTとは、Internet of Thingsの略で、「モノのインターネット」

と表現されます。

全てのものがインターネットにつながることで、

これまでの業種の垣根を越えた新たなビジネスモデル、

事業領域を生み出すことができるという、大きな可能性を秘めています。

IOTの場合、全く新しいビジネスをつくるより、従来の事業を見直し、

ビジネスの質を高めたり、転換させることに効果があると、解説されています。

まさに、今まで人が担ってきた仕事を、もっと正確に、

素早くこなす可能性があり、大きく利便性、安全性を高めること

につながります。

IOTが提供するサービスは幅広く、消費者向けと、産業向けの用途に分けられ、

多方面に広がりを見せています。

製造業におけるIOTの代表的取組として、

ドイツの「インダストリー4.0」と、

米GEの「インダストリアル・インターネット」等の

たくさんの役立つ事例も本書で紹介されています。

IOTはこれまでのモノを売るビジネスモデルから、

IOTで集めた情報を活かして「サービス」を売るビジネスを志向している

という点がポイントとなります。

製造業も、モノとしての○○から、サービスとしての○○へ、

「○○ as a Service」へと考え方をシフトしていかなければ、

本書で事例として挙げられているようなイノベーションに

凌駕されてしまうかもしれません。

日本企業が生き残るための具体的戦略

すぐに自社の事業領域を再定義し、ビジネスモデルを見直すべきで、 

産業の垣根は消滅し、業界構造や業界秩序は破壊されるので、

何もしなければ厳しい競争にさらされるが、

この流れに上手に取組めば新しい事業機会が得られる。

と、本書では解説されています。

もはや競争激化が待ち受けている待ったなしの状況で、

現状維持では足元をすくわれてしまいます。

先端技術をキャッチアップし、それをどう自社のビジネスに取り入れていくか、

積極的に取りに行く側にまわらなければならないと、認識をあらためました。 

自社にも使えるかもしれないと言う気軽なメンタリティで考え、

スピード重視で実行することが重要で、結果が出なくてもいいので、

とりあえずこの位やってみようというリーンスタートアップでいけば、

今こそスピーディに革新的な新規事業を立ち上げるチャンスだと言います。

しかし、技術革命は日本にとって最も苦手な革命で、

そうこうしてる間にテクノロジー4.0の時代に入ったとの事です。

従って、もはや国に頼るのではなく、気付いた自分が覚悟を決めて、

デジタルコンチネント(大陸)に移り住むことが大事だと指摘しています。

まとめ

歴史に学ぶことは重要で、第一次産業革命も、第二次産業革命も、

通り過ぎてみれば、皆当たり前のことのように思えますが、

古い産業にどっぷり浸かってしまっている当事者からすると、

古いやり方が、新しい技術に取って代わられるその瞬間には、

なかなか事実を認められないことがあると思います。

それを、もうテクノロジーは誰もが使える状態にあると、

これらの組み合わせで新しいビジネスがどんどん生まれています。

でも何もしなければ、新しい技術に取って代わられるだけで、

スピード重視の早い者勝ちになっているということです。

自分自身には耳が痛い気がしましたが、

ただ、本書でたくさん紹介されている事例には、多くのヒントが含まれており、

それらの先端事例をもとに、自社の業界やビジネスで何が出来るかを

考えていけば、テクノロジーを利用して、イノベーションを起こす側に

まわることも十分に可能であると、前向きな気持ちにもさせてもらいました。

その為に先端技術について、キャッチアップし、全体像をしっかり把握し、

何ができるかをじっくりと考える必要性を痛感しています。

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