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書評ブログ「USJを劇的に変えた、たった1つの考え方」

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USJを劇的に変えた、たった1つの考え方(成功を引き寄せるマーケティング入門)森岡毅 著 角川文庫

著者紹介 森岡毅氏

日本を代表する戦略家・マーケター。

日本のP&Gでブランドマネージャーとして

ヴィダルサスーンの黄金期を築いた後、

P&G世界本社へ転籍、北米パンテーンのブランドマネージャー、

ヘアケアカテゴリー アソシエイトマーケティングディレクター、

ウエラジャパン副代表を経て、USJ入社。

同社CMO(チーフ・マーケティング・オフィサー)、執行役員、

マーケティング本部長を務める。

経営危機にあったUSJをわずか数年で劇的に経営再建。

USJ再建の使命完了後、2017年、

マーケティング精鋭集団「株式会社刀」を設立、代表取締役CEOに。

USJ(ユニバーサルスタジオジャパン)の再建で、

メディアにも多く取り上げられた、森岡氏を知っている人も多いと思います。

やはりP&G社は卒業生も優秀な人材がたくさんいることが分かります。

マーケターとして、市場動向を的確に見極めながら、

自ブランドの強みを引き出す戦略を立案し、

それだけではなく、その戦略を

一緒になって実践していく様子も描かれています。

主に、USJ再建の経験を中心に、マーケティング初心者にも、

その手法をわかりやすく解説してくれています。

「マーケター」の最重要の役割とは

マーケティングを担う「マーケター」という言葉は、

まだ日本ではそんなに市民権を得られていないのではないかと思いますが、

本書にはマーケターという言葉が多く登場します。

本書を読み進めるごとに、自分もマーケターになりたい、と

憧れの気持ちがどんどん湧いてきました。

そのマーケターですが、マーケターの重要な仕事として、

ビジネスが伸びる・伸びないの本質を見極めることに

労力を使わねばならないと、著者は言います。

マーケターは、企業の軍師であり、企業の進むべき方向を見極める

重要な役割があります。

どう戦うかも重要な戦略ですが、その前にマーケターが最初にすべき

最重要の役割は、「どこで戦うか」を正しく見極めて、その正しい方向に

会社を引っ張っていくことだと著者は言います。

どう戦うかという以前に、どこで戦うかということ、

自社が戦うに値する場所なのかどうか、

それを全力で検討することが重要ということです。

頑張っているのに結果が出ないのは、会社として「どこで戦うか」を

正しく設定できていないからだと、指摘されています。

まさにマーケターは、経営者同様、会社の命運を握る、

かなり重要な役割を担っていることが分かります。

会社を往復ビンタで儲けさせる

自社のブランド評価を大切にする著者は、

値上げしたら簡単にお客が離れてしまうような価格弾力性の高い

商品・サービスではダメで、ブランド価値を高めて、値上げしても

需要が下がらないよう、価格弾力性を出来るだけ小さくすること

を重視しています。

従って、一流のマーケターは、値下げして利益を削ってまで

販売数を伸ばそうとするのではなく、

値上げしながら、同時に販売数も伸ばしていくこと。

単価と数量の両方を上げて、

会社を往復ビンタで儲けさせることが大事であるといっています。

一見トレードオフの関係で、あちらを立てればこちらが立たずの

関係に見える、「価格」と「販売数」ですが、

ブランド価値を高めることで、これを両立させてしまうという考え方ですね。

そしてまさに、USJこそが、それを成し遂げています。

USJは入場料を値上げし続けながらも、入場者数を年々増加させており、

お客さんの期待を上回る体験を提供し続けている証左ですね。

会社を変えたのはたった一点だけ

著者がUSJに入って、会社を変えたのは一点だけだったそうです。

それは、「消費者視点」という価値観を最優先にすることでした。

会社側のどんな事情も善意も、消費者価値に繋がらなければ一切意味がない、

という価値観に基づく意思決定ができる会社にすることに集中したそうです。

しかしこれが誰もが実現できるような簡単なことではなく、

顧客が喜ぶだろうと、作る側が思っているものは、

必ずしも顧客が本当に喜ぶものと一致しないもので、

社内の利害調整ばかりに多くの時間が割かれ、

消費者価値向上からどんどんずれたことをやってしまうことは

よくある話だということです。

USJでは、マーケティングに消費者視点を社内横断的にドライブさせる

仕組みを選んだことで成功できたといいます。

形式的なものではなく、しっかりマーケティングに権限を持たせて、

消費者視点を優先できる仕組みを取り入れたということですね。

マーケティング発展途上国、日本

そもそもマーケティングとは、自由競争市場のアメリカで、

企業が生き残るための消費者最適を担保する知恵を体系立てたもので、

技術志向の日本では、マーケティングの発展がかなり遅れているようです。

なぜなら、かつての技術を獲得していくという目的に対しては、

終身雇用制や年功序列の日本的なやり方は合っていたのですが、

時代が変わって、世界が一つの市場となり、誰もが自由競争に

巻き込まれている現在では、技術による商品差別化が困難な、

プレイヤーが多いローテク業界などで特に、マーケティング力の必要が

あちこちで迫られているということです。

良いものをつくれば売れる時代は既に終わり、売れたものが良いもの、

という時代がやってきたと。そんな時代に生き残っていくには、

マーケティング優勢で、技術力を活用する会社が理想だと言います。

戦略とは

企業には常に人、モノ、お金などの経営資源が不足しているもので、

意思決定者は考え抜いて、やりたいことの中から、

本当にやるべきことを選ぶことが重要だと言います。

全てをやろうとすることは、選ばないことと同じで、

つまり戦略が無いということになります。

選ぶことで経営資源を足りるようにして、勝率を上げることが出来ます。

やることを選ぶということは、同時に「やらないこと」を選ぶということです。

「選択と集中」こそが、戦略の核となる考え方ということです。

日本の学校教育は、好き嫌いせずに全部やり遂げることを習慣づけようとする

部分で、戦略的とは真逆をいっており、取り敢えず全部やってみようとする

ことは、無意味に資源を分散させているだけの、戦略なき愚か者のすることで、

そこに戦略が無ければ、突出した成果は望めないということです。

自分は欲張りなもので、思いついたことを片っ端からやってみようとしがちで、

後でどれも中途半端になってしまったと後悔することも度々です。

そこからもう一歩、深く考察していくことで、優先順位をつけて、

選択と集中を意識することが、逆に成功確率を上げてくれるということですね。

良い戦略と悪い戦略を見分けるモノサシ

マーケティングの戦略的思考として、

まず最上位の概念として「目的」をおいて、

次に目的を達成するための「戦略」があり、

戦略を実行するための具体的なプランである、「戦術」があります。

戦略を間違ったものにしてしまった場合、

その戦略のミスを戦術でカバーすることは出来ないので、

企業にとって、どこで戦うかという戦略を正しく定めることが

何よりも重要となります。

その戦略の良し悪しを見分けるモノサシとして、

「戦略の4S」が紹介されています。

1.Selective  選択的かどうか

つまり、やることとやらないことを明確に区別できているか。

2.Sufficient 十分かどうか

Selectiveとセットで、Sufficientでないならば、

もっとSelectiveに絞り込んで、経営資源の不足を補わねばなりません。

3.Sustainable 継続可能かどうか

戦略が短期でなく中長期で継続できるかという視点。

より長く競争優位を維持できる戦略が良い戦略。

競合がすぐにマネして追随可能となる戦略や、

経営資源が枯渇して継続不能になる戦略は問題有り。

4.Synchronized 自社の特徴との整合性

自社の強みや弱み、経営資源の特徴を有効活用できているか。

かつてUSJでとられていた戦略は、

上記「4S」のどこにも強みがなく、

実行不可能な戦略だったため、

著者は迷わず戦略を大幅に変更したそうです。

「戦略の4S」を覚えておきましょう。

市場を理解する5C分析

市場構造を自分の味方につけられるような戦略を考える為に、

戦況分析を本気でやる必要があります。

本書では、戦況分析で市場を理解するのに役立つ、

「5C分析」について紹介されています。

1.Company 自社の理解

2.Consumer 消費者の理解

3.Custmer 流通など中間顧客の理解

4.Competitor 競合他社の理解

  広義においての競合理解までやっておくこと。

5.Community ビジネスを取り巻く地域社会の理解。

  社会がビジネスに与える外部要因。法律などの規制。

これらのフレームワークをつかって、市場で起きていることを

理解することで、自社が優位性を発揮できる

戦略づくりに役立てましょう。

WHO 誰に売るのか、ターゲットの設定

購買力は、どこかに大きく偏っているものだから、

ターゲットを選んでリソースを集中した方が効率が良い、

と著者は言います。

どの消費者のニーズを満たすのか、ターゲットを選び、

絞り込む必要があります。

本書では、有効なコアターゲットを発見する切り口の紹介もあります。

もしターゲットを見つけられないならば、

それはまだ消費者理解が足りていないということ、

マーケティングの真髄は、消費者理解にこそある、ということです。

さらに、消費者本人でさえも気づいていない、

「消費者インサイト」を見つけて、

そこを衝いていくことで、集客効果や売上を増加させることが

出来ると言っています。

WHAT 何を売るのか

消費者がそのブランドを選び、購入する根源的な理由、

つまり自分達が本当に売っているものは何か、という

「WHAT」の戦略的選択も重要です。

本書では、フェラーリや東京ディズニーリゾートの

WHAT(根源的価値)の戦略を紹介しています。

その価値というのは、必ずしも万人に共通して好まれるものとは限らず、

しかしそのターゲットとする客層にとっては、

本当に心をつかまれてしまうようなものです。

このあたりは、こうした成功事例から学べることは多いと思います。

HOW どうやって売るのか

どうやって売っていくか、という「HOW」は戦術にあたります。

いわば、「HOW」は「WHAT」を「WHO」に届けるための仕掛けであり、

最も重要なことは、「HOW」というより、「WHO」の理解であると言います。

あくまでも自分のセンスだけで判断するのではなく、

深く理解した消費者の視点から「HOW」を判断することが大事であり、

「HOW」を徹底的に詰めないと、結果も出ないし、

真のマーケターにもなれないと著者は言います。

しかし逆に、「WHO」「WHAT」「HOW」が全てうまくいくと、

ビジネスは爆発する、とも言っています。

このことは非常に学びが多く、自分本位につくりだした

「WHAT」をいかに売るかということで、

無理やり「HOW」を考えて、やみくもに実施するという、

よくあるパターンにおいては、全く「WHO」が後回しにされてしまいます。

そうではなく、まず「WHO」を徹底的に選び抜いて、

理解しつくさなければ始まらない、ということを

しっかりと認識しなければなりません。

戦略が弱いのが日本人の特徴

情緒的で精神主義重視の日本社会では、

そのことが、戦術面での強さにつながっているといいます。

業務遂行には、気持ちが入ることで、それが強みになっている

ということでしょう。

しかし、だからこそ、情緒が入り込むことで、

戦略が弱くなってしまっているのが日本人の特徴だと言います。

その場の空気感や、あうんの呼吸を大事にすることで、

合理的に行うべき意思決定にまで情緒が入り込んでしまい、

合理的に正しい判断が出来ずに、情緒的意思決定をして

しまいがちであると指摘しています。

右肩上がりだった、かつての作れば売れる時代は

それでも何とかなったが、

質的な成長が求められる激しいシェア争いの時代では、

生き残るために戦略を練りに練って、

絶え間ない自己破壊と自己変革が必要になるといいます。

戦略を改善することで、本来もつ日本人の戦術的強みはもっと輝くので、

まずはマインドセットを変えて、

どこで戦うべきかを合理的に突き詰めて冷静に選ぶことが大事だといいます。

また、マーケティングは日本人にも馴染みやすい合理主義で、

人々を幸せにすることで、自分も幸せになれる科学、との事です。

マーケターに向いている人

著者は、マーケターに向いている4つの適性をあげています。

1.リーダーシップの強い人

 様々なベクトルの交差点に立ち続け、それらを束ねて一つの方向に引っ張る、

人を動かすことで結果を出せる人。

2.考える力が強い人

 高い知性を戦略的に活用できる人。

3.EQの高い人(EQ=心の知能)

 洞察力、高いEQに根差した共感力のある人。

4.精神的にタフな人

 貪欲さと打たれ強さが必要。

一人で単独での仕事が優れているだけでは無理で、

人を巻き込み、信頼され、協力を得て、

その中でものごとをどんどん決断できるような

そういった能力が求められます。

営業マンは、ある程度マーケターと似た側面があると思っていましたが、

営業マンは個人単独での仕事力があれば、

トップ営業マンになれる側面がありますが、

マーケターは単独で完結できる仕事はほとんどないということかもしれません。

人がなかなか変われない理由

人の行動はその人のスキルに支配され、

スキルはマインドセットに支配され、

マインドセットは価値観に支配されています。

その人のマインドセットは価値観の範囲にどうしても限定されてしまい、

その人の価値観に矛盾するマインドセットを持つことは無理とうことです。

従って、マインドセットが変わらないとスキルは獲得できず、

スキルが無いと適切な行動は難しくなります。

自分の行動を変えたい時、あるいは

部下や人の行動改善を促したい時に、

行動だけを見るのではなく、

その内側にあるスキルやマインドセットの階層を

しっかりと洞察しなければならない、ということです。

変わりたければ、自分の価値観に沿った範囲内で

マインドセットを書き換えていくか、

価値観そのものを変える必要があるということで、

それほどまでに、人は大きく変わることは難しいということでしょう。

このことを認識できていることは大事だと思います。

自分の強みを引き出す

自分の強みは、必ず好きなことの中に埋もれているので、

好きな行動を書き出して、それらの行動の内側にある

自身の能力やスキルが何であるかを考えてみることをお勧めされています。

強みは認識しないとフル活用できないので、

自分でよく認識してやることが重要ということです。

自分の持って生まれたものをどれだけ引き出せるか、

これを長い目で粘り強く挑戦し続けることが大事だということです。

このことは、意外とできていない人が多いのではないでしょうか。

私自身が、自分のことをもっと深く分析してみる必要があるのだと思います。

自分で自分の良さを引き出してあげる、

という感覚を持ち続けていきたいです。

まとめ

企業の軍師たるマーケターは、消費者視点を最重要視して、

企業の業績を上げるための戦略を考え、実施していきます。

市場で起こっていることを理解し、消費者を理解して、

「WHO」「WHAT」「HOW」をしっかりと考え抜きます。

マーケターは、日本人が苦手とする戦略を冷静に、合理的に導き出し、

時に個人、時に組織を変革してでも、消費者に向けた最適解を打ち出していく。

まさに、マーケターは、これからの答えのない時代に、

イノベーションを起こせる企業の頭脳として、

ますます必要とされ、存在感を強めていくことと思います。

また、著者のプロ意識の高さ、問題発見力や、

まわりの人を巻き込む求心力も、決して机上の空論ではなく、

実践的でとても学びの多い著書です。

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