![](https://yu16san.com/wp-content/uploads/2021/10/中対米.jpg)
バイデン大統領の外交政策
米国のバイデン大統領は先月、就任後初の
国連総会で、一般討論演説にのぞみ、
外交政策の基本方針を説明しました。
CNN.co.jp バイデン氏が国連演説、軍事力でなく「徹底的な外交」で危機解決を
新型コロナウイルスのパンデミックや、異常気象
などの気候変動の脅威に、国際社会が一致団結して
対処していくよう訴えるなど、前トランプ大統領の
米国第一主義から、国際協調への転換を強調していた
ようですが、熾烈を極める中国との覇権争いについては
中国への名指しの非難は避け、「新たな冷戦は望んでいない」と語りました。
そうは言いながらも、アフガニスタンからの
米軍の撤収後の外交・安全保障政策に関しては、
「最も重要なインド太平洋に焦点を移す」と述べています。
ここへきて、インド太平洋での新しい枠組みとして、
米国がかかげる、「クアッド」、「オーカス」
といった名称をよく聞くようになりましたが、
いったいどのような枠組みなのでしょうか?
QUQD(クアッド)とは?
![](https://yu16san.com/wp-content/uploads/2021/10/QUAD.jpg)
クアッドという言葉は、「4」を意味しており、
四か国の連携・協力の枠組みとなります。
この枠組みには日本も含まれており、
先日、菅前首相がワシントンでの初の対面による会合に出席しています。
同盟国の日本や、中国との関係がうまくいっていない
オーストラリアが加盟するのは分かりますが、
米国と同盟関係に無いインドが加盟するという点が
特徴的であり、大国インドを取り込むことで、
中国への影響力を高めることが狙いなのでしょう。
確かに加盟四カ国は、何かしら中国とのトラブル
というか、課題を抱えていますね。
そしてインドも、中国との領土問題を抱えており、
6月には両国の軍事衝突にまで発展し、今も国境付近で
にらみ合いを続け、緊張関係となっています。
ただし、実際のところ四カ国ともに、経済的には中国との
貿易はかなりの割合を占めているので、中国と経済的に
切り離されてしまったら大変なことになります。
そのあたりを考えると、果たして本当に、はっきりと中国へ
の対抗を打ち出していけるのかどうかは、難しいところではないでしょうか。
AUKUS(オーカス)とは?
![](https://yu16san.com/wp-content/uploads/2021/10/AUKUS.jpg)
米・英・豪の三か国の軍事同盟です。
オーカスは、クアッドとの相互補完的なもの
とも考えられており、こちらも対中戦略の柱として、
インド太平洋地域を念頭に置いた、新たな安全保障協力の枠組みとなります。
そして、最初の協力案件として、米英が豪州の
原子力潜水艦導入を技術面などで支援することになりましたが、
このことで、豪州とフランスの関係が悪化しています。
当初オーストラリアは、潜水艦の開発計画をフランスと
契約していたようなのですが、その契約を、オーカス創設
発表の数時間前に豪州が事前通告もなくドタキャンしたと
言われており、フランスは、およそ7兆円とも言われる取引が
無くなってしまったということです。
それだけではなく、原子力潜水艦という、米英など
数カ国しか持っていなかった装備を手にするということで、
インドネシアなどオーストラリア周辺国が
警戒感を増し、中国にとってもインパクトを
与えるものになりそうです。
なぜこのタイミングか?
![](https://yu16san.com/wp-content/uploads/2021/10/time-gcd13ba3f4_640.jpg)
米国バイデン大統領は、外交面で早く成果を
上げなければと、焦っているのではないか
という指摘が多くなされています。
アフガニスタンからの中後半端な米軍撤退により
招いてしまった混乱で、批判を受けたりと、
バイデンへの支持率も低下しており、早くこのあたりで
指導力をアピールしておかないと、と焦っているのでは、
という印象は確かに拭いきれません。
とにかく中国と問題を抱える国々と連携を強化し、
米中の覇権争いを優位に進めたいということなので
しょうが、今後どのように展開されていくのか、
注意深く見ていかなければと思います。
そして中国も動いた
![](https://yu16san.com/wp-content/uploads/2021/10/china-g447ef3dff_640.png)
こうした米国による中国包囲網に対して、
中国も対抗しようという動きを見せています。
その一つが、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)
への加入申請です。
![](https://yu16san.com/wp-content/uploads/2021/10/TPP.jpg)
米国は、アジア太平洋地域での影響力を高め、逆に
中国経済のアジア地域でのデカップリング(切り離し)
を狙っていますが、そうした米国の動きにに歯止めを掛けようとするものです。
ちなみに米国はトランプ前大統領がTPPを離脱しており、
バイデン大統領は復帰を目指しています。
そして、今度は台湾の蔡英文政権がこの中国の動き
を受けて、あわてて台湾のTPPへの正式申請をしました。
しかし、TPPの参加には全加盟国の同意が必要で、
先に中国の加盟が実現すれば、台湾の参加は中国に
拒まれてしまい、事実上不可能となります。
今後、中国と台湾のTPP参加を巡る外交的な働きかけや
駆け引きがますます強まるといわれています。
そしてわが日本は
![](https://yu16san.com/wp-content/uploads/2021/10/jinkou_nihon.png)
そんな難しい状況の中で、日本は今年、
TPPの議長国になっています。
台湾としては、TPP正式申請の理由について、
中国を意識したのではなく、親交の深い日本が
議長国であるからだとコメントを出しましたが、
中国と台湾が同時に加盟というのは、現実的ではなく、
この難易度の高い課題に、果たして日本は議長国として
リーダーシップを発揮していけるのでしょうか。
注目して見ていきましょう。
まとめ
米国バイデン大統領は、国連総会での外交政策
の演説の中で、インド太平洋地域を最重要視すると述べ、
「クアッド」、「オーカス」といった連携・協力の
枠組みを強化する動きを見せています。
これらの枠組みは「中国包囲網」と捉えられており、
アフガニスタンからの米軍撤退で批判を浴びて、
支持率が低下したことに焦る、バイデン大統領が
米中の覇権争いを優位に進めようとするものです。
対する中国も、日本が中心になって進めてきた
TPPに加入申請し、米国のアジア太平洋地域での
影響力拡大に歯止めをかけようとしています。
同時に台湾もTPP加入を正式申請するなど、難しい局面
を迎えたTPPですが、日本は今年TPPの議長国となっています。
難題を抱えたTPPで、日本はどのようなリーダーシップ
を発揮できるのか、注目していきたいと思います。