気候変動対策の世界的な会議
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気候変動対策について世界各国で話し合う
「第26回国連気候変動枠組条約締結国会議(COP26)」が、
イギリスのグラスゴーにて、開催されました。
2015年に合意、成立されたパリ協定では、
世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べ2℃より低くし、
1.5℃に抑える努力をすることを目標としています。
パリ協定については過去に当ブログでご紹介しました。
一方で、国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)
が今年8月に発表した第6次評価報告書によると、
当初想定したよりも、現実の気候はもっと悪く、
バッドシナリオの方向に推移しており、早急に
対策を講じて温室効果ガスの排出を大幅に減らさないと、
世界の平均気温は、21世紀中に4.4℃の上昇まであり得るという予測もあります。
平均で4.4℃の上昇というのは、素人が聞いただけでも
かなり恐ろしいことが起こりそうな気がする数値です。
もはや、人類による工業化が、こうした気候変動に
影響を与えていることは疑う余地がない、という
専門家も増えており、多くの人が亡くなってしまうような、
甚大な自然災害を、これ以上増やさないように、
世界が協力していかねばなりません。
世界の二酸化炭素排出量の国別内訳
COP26の会議を理解するために、
まずはこれを知っておく必要があります
世界の二酸化炭素排出量の内訳について、今は
中国とアメリカが断トツのツートップです。
![](https://yu16san.com/wp-content/uploads/2021/11/JCCCA世界の二酸化炭素排出量2018.jpg)
この二大経済大国の協力無くしては、
地球温暖化問題の解決は不可能でしょう。
1位の中国が世界の3割弱を占める程の断トツ首位で、
2位の米国の2倍程度も排出しています。
3位のインドまでを足すと3カ国でピッタリ世界の50%
になるということも注目すべき点です。
世界の二酸化炭素排出量の半分が、中国、アメリカ、インド
の3カ国によって排出されているということです。
そしてわが日本が、4位ロシアに次いで5位に入っています。
かつての経済大国、今もGDP(国内総生産)世界3位の日本とすれば、
もっと上位に入ってしまってもおかしくないと思いましたが、
二酸化炭素排出削減については、経済規模の割には
意外に頑張っているのかもしれないと思いました。
いずれにせよ、わずか10数か国から、世界の7割以上の
二酸化炭素が排出されているということは無視できず、
昨今エスカレートしていく自然災害の甚大化からも、
もう、ここを無視してお金儲けに走っても、
みんなの地球が滅んでしまっては全く無意味になります。
昨今ではヨーロッパだけでなく世界中で、環境対応をしているか
どうかに関心を持つ人が増え、企業の評価にも大きく影響するようになってきています。
COP26で話し合われること
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さて、COP26では、何が話し合われるのでしょうか?
まず各国が温室効果ガスの国別の削減目標を打ち出します。
ただし、各国の目標達成に向けた活動については、
共通するルールなどはなく、それぞれの国が
独自に設定した目標に向かって、バラバラに挑戦して
いくというのが現実のようです。
従って、同じ尺度で各国を比較することが困難で、
目標として掲げた平均気温の上昇を1.5℃に抑えることに
対して、各国の取組が十分なのかどうか、その評価が難しいと言われます。
それでも大事なことは、地球温暖化に大きな影響をおよぼす、
石炭、石油などの化石燃料を使った発電について、
これをやめていく、という部分になります。
しかし、国連はOECD加盟国に対し、2030年までに石炭の利用の
段階的廃止を呼びかけていますが、このスケジュールについては
まだ主要20カ国(G20)から合意が得られていないといいます。
このようなまとまりのない状況が、COP26でも続いていると、
しびれを切らしたのが、環境活動家のグレタ・トゥンベリさん(18)です。
以前は米国のトランプ元大統領との舌戦でも話題となりましたが、
今回はグラスゴーでの若者たちによる大規模なデモの中で、
「COPはPRイベントになり果てた」と厳しく批判しています。
FNNプライムオンライン COP26現地で大規模デモ グレタさん「ただのPRイベント」
要するに口だけは立派だが、中身が伴っていない
ということを言いたいのだと思いますが、
まさに、おっしゃる通りだと思います。
「化石賞」という不名誉
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そして、このCOPの中では、毎日
「化石賞」なる、気候変動交渉・対策の足を引っ張った
と思われる国を、気候変動NGOネットワークという市民団体が
毎日選出して、そこに贈られるという不名誉な賞があります。
これに日本が選ばれてしまったことが話題になりました。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20211103/k10013333191000.html
NHKニュース 日本に「化石賞」国際的な環境NGO “温暖化対策に消極的”
しかし、これはCOPの期間中毎日選出されるもので、
確かに日本は前回のCOP25から連続して「化石賞」に
選出されてしまっていますが、多くの国が毎日
選ばれていますので、あまり気にし過ぎることも
ないような気がします。 確かに日本は化石燃料に
いまだに多くのエネルギーを頼っており、すぐに
これを全廃することはできず、日本がクリーンエネルギー
としてかつて選ぼうとした原子力発電は3.11の震災以降頓挫し、
10年以上の長期的な準備が必要といわれる再生可能エネルギーは、
火力発電にとって代えられるほどには、ほとんど準備できていません。
ただし、重要なのは大風呂敷を広げるようなスピーチの
インパクトではなく、実際にCO2排出削減にどれだけ
貢献できたかということになりますので、
言葉は足りなかったが、実際の行動で示す日本、
に期待してみたいところです。
一位の国はどこへ?
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ところで、CO2排出量1位のあの国は
どうしたのでしょうか?
一位中国の習近平国家主席は、COP26を欠席し、
排出削減目標の引き上げも見送っています。
今回は何とか米中共同宣言を打ち出し、
米中両国が今後10年間の気候変動対策で
協力を強化することを発表しましたが、
具体的な数値目標などが乏しく、
厳しい批判をかわす、ポーズ的な要素が強いのかもしれません。
JIJI.COM 米中、気候変動で共同宣言 首脳会談へ協調演出―具体策乏しく
世界のCO2の総排出量の4割以上を出しながらも
まだ、いまいち脱炭素への姿勢や約束について、
物足りない印象の米中二大国ですが、
実は、脱炭素への研究も、人材も世界のトップレベル
にあることが分かっています。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC20CQZ0Q1A520C2000000/
日本経済新聞 脱炭素の論文数、中国16分野で首位「質」は米優勢
こんなに研究が進んでいるなら、是非その研究を
実行することで世界に役立ててもらいたいと思います。
これからの米中の二大国のリーダーシップを
しっかり監視し、注目していきましょう。
カーボンニュートラルに求められること
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日本の場合、CO2排出が最も多いのは、
発電所や製油所などのエネルギー転換の分野です。
日本の発電は火力発電に大半を依存していますので、
まずはそこが最も改善が求められるところとなります。
例えば自動車を電気自動車(EV)に変えたところで、
その電気自動車で使われる電気が、どうやって生み出されるのか
が問われてきます。せっかくの電気自動車でも、
その電気が、火力発電など化石燃料を燃やして発電されて
いる間は間接的にCO2排出に関わってしまっており、
削減効果が乏しくなります。
まず電力そのものをいかに再生可能エネルギーによって
発電できるのかが非常に重要になります。
他にも産業分野でのCO2排出を容易に削減できない
「製鉄」などの分野もあり、そもそもの節電や、
資源リサイクルなどの再生技術も重要になってきます。
日本も活躍できる、脱炭素への最新技術とは
![](https://yu16san.com/wp-content/uploads/2021/11/hydrogen-g6b5ad16b2_640.jpg)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC15C8O0V11C21A0000000/?unlock=1
日本経済新聞 脱炭素技術番付、日本企業に潜在力 水素やCCUSで先行
日本経済新聞の上記記事では、2050年時点で期待される
炭素削減の技術についてのランキングで、
上位10社中、日本企業は5社が入り最多でした。
脱炭素への最新技術として期待できるものは、
火力発電の代替エネルギーとしての水素や、
その水素よりも低コストといわれるアンモニアを使った
発電についても、世界的に研究が進んでいます。
そしてもう一つ、発生してしまったCO2について、
そのCO2を吸収・分離し、地中に埋めたり、
有用な物質に変換したりする「CCUS」という技術が
今、評価されています。発生させてしまったCO2を
大気中に放出せずに回収したり、吸収・分離・貯蔵
といった手段をとることにより、地球温暖化への
影響を少しでも抑えるという技術が出来上がりつつあります。
まとめ
本来なら11月12日までであった会期を
1日延長するほどに紛糾した会議のCOP26でしたが、
「グラスゴー気候協定」という、パリ協定が目指す
「産業革命前からの気温上昇を1.5℃に抑える」こと
への努力の追求が明記された協定が採択され、
なんとか閉幕となりました。 中国とインドの要求により、
一部表現が消極的なものに後退するなど、
各国の思惑、主張が複雑に絡み合っていますが、
その結果が問われてくるのはこれからとなります。
次回COP27は来年後半にエジプトにて開催される予定ですが、
会議の回数ばかり増えて、ちっともCO2排出量が減って
いかないようでは本末転倒ですので、中身のある
議論を進めて欲しいと願っています。