新型コロナではいち早く封じ込めに成功し、
無事に北京オリンピック開催まで成し遂げ、
コロナ優等生とまで言われた中国が
ここへきて、そのゼロコロナ政策の
限界を指摘されています。
ゼロコロナ政策とはどういうものか?
その限界とは、どういうものか?
取り上げていきたいと思います。
中国ゼロコロナ政策とは
中国のゼロコロナ政策とは、
いかに感染者と濃厚接触者を見つけて
その人を社会から隔離するか、に全力を注ぎ、
その上で社会活動は抑制しないという方法です。
日本が、お願いベースで、飲食店や、
観光などの社会活動を抑制し、とにかく人流を
減らしたやり方とは異なる政策となります。
要するに、中国は全ての感染者、濃厚接触者を
全員見つけ出して隔離し、社会活動の中では
コロナ感染者がゼロという状況を維持し続ける。
それがゼロコロナ政策ということです。
このやり方は、コロナ初期の「アルファ株」
の頃には極めて有効で、中国は武漢市などを
はじめとした初期のコロナ対策での成功
から、世界の優等生と評価されました。
そしてこのやり方を貫いて、中国は
2月の北京冬季オリンピックと、続く3月の
パラリンピックも成功させることができました。
しかし、コロナウイルスの変異により、
感染力の強い「オミクロン株」が主流になり、
これは予防接種をしておけば、たとえ感染しても
多くの人は軽症で済み、病院に行く必要がない
といわれ、これをきっかけに、いよいよ世界が
コロナ収束を見据えた「ウィズ・コロナ」に
向かって方向転換しようという雰囲気になってきました。
そんな中、世界のグローバル経済を支える中国が、
感染者を急激に増加させ、上海などの相次ぐ
ロックダウンで、その動向に注目が集まっています。
中国ならではのゼロコロナ政策
中国のゼロコロナ政策の中で
便利に活用されたのが、「PCR検査」です。
陽性者を正確に検出するには、誤差もあるので
そこまで絶対的に正確な精度ではない
という見方もありますが、中国では、
このPCR検査を同じ人に何回も実施し、
回数で勝負しました。
また、そういった頻繁なPCR検査ができる体制
を速やかに構築しました。
上海市でもおよそ2500万人の市民の
PCR検査を、あっという間に実施したといいます。
PCR検査の方法も、圧倒的に感染していない
人の方が多いので、一人一人を丁寧に
個人情報を管理しながら行うというよりも、
10人前後をひとまとめのグループとして管理して、
このグループの中に陽性者が出た、となったら
10人をまた呼び出して、陽性者を絞り込み
ながら特定していくといった、
スピードを重視した手法が使われているようで、
それが迅速な陽性者の発見につながっているようです。
そして中国では、陽性者が一旦特定されれば、
その人がどこからどこに移動して、どこで何を
していたかが公開されて、濃厚接触者も
割り出されていくということです。
それらの活動を支える医療ボランティアにも、
今や9千万人を超えると言われる中国共産党員
がバックアップし、中国全土から動員されているようです。
デジタルテクノロジーの活用
この人海戦術のような医療体制の総動員とともに、
もう一つ、ゼロコロナ政策を支えるのに
重要な役割を果たしているのが、
デジタルテクノロジーの活用です。
その代表的なものが、「健康コード」と呼ばれる
スマホアプリとなります。 これは、
スマホを活用し、一人一人にアプリが
与えられ、信号機のように「赤」「黄色」「緑」
の3色の色分けがされます。これが各個人の
コロナ感染状況を示す「健康コード」
となり、アプリの判定が「緑」であれば、
基本的には自由な移動が認められているということです。
それが、「赤」になってしまうと自宅待機が
命ぜられてしまうということです。
このようなアプリは、日本であれば
お願いベースになり、どこまで協力する
人がいるのかはわからず、厚生労働省の
「COCOA」のように、中途半端なものに
なってしまうのだろうと思います。
中国でも義務ではないのかもしれませんが、
もはや中国ではスマホと個人情報、
決済機能などが日本以上に深く結びついており、
スマホなしに生活することは日本人が
想像する以上にかなり困難となります。
例えば中国では、日本と違って現金に信頼が低く、
クレジットカードも普及しなかったために、
スマホ決済が一気に普及しました。
ほぼ国民一人一台はスマホを保有し、
そのスマホに身分証や個人情報が
がっちりと紐づいています。
さらに中国では、一般市民が生活に必要な
スーパーなどのお店や会社、公共機関などが
「健康コード」の提示なしには利用できず、
皆、アプリを使わざるを得ないということのようです。
もともと中国は、監視網がとても厳しく、
街頭や公共施設など、あらゆる場所に
監視カメラが設置されており、それらが
顔認証システムと連動しているために、
いつ、どこに、誰がいたのかが、明らかになります。
プライバシーの侵害を指摘する声も
ある中で、逃亡犯の逮捕や犯罪抑止の効果、
そして、今回のコロナ禍でのゼロコロナ政策
にも大きな効果を上げています。
中国では、国家を批判するような目立つ言動や
行動さえ取らなければ、これらの便利さを
享受した方が良いと考える国民が多く、
それでうまくいっているという側面もあります。
日本との違い
日本の場合は、個人情報の取り扱いに
とても慎重で、プライバシーに配慮されている
部分はあるものの、国民にマスクを配布
しようとしたり、一人10万円の給付金を
配ろうとしても、全ての国民に漏れなく
対応しようとするあまり、
WEB上でも窓口でもどちらも対応し、
結果、効率の悪いやり方となってしまい、
他国と比べてもやたらと時間がかかっている部分が否めません。
中国と日本のコロナ対策の大きな違いとして、
日本は「性善説」に沿って、お願いベースで、
人流抑制やマスク、消毒などを呼び掛けて、
それに個人や企業がちゃんと協力していく
という体制が機能していたと思います。
時にはマスク警察のような、自発的に
注意してまわる人が出てきたり、飲食店や
飛行機などでマスクをしない人をめぐるトラブル
などが報道され、協力するのが当たり前、
協力しない人は悪い人、といった
ムードが勝手に出来上がっていきました。
おそらく欧米では個人の主義主張が
強いため、法的な規制、罰則などを設けないと
お願いベースでマスクをしたり、人流抑制は
できないのだろうと思います。
日本のお願いベースでの対策は、
日本人だからこそうまくいった「性善説」
に基づくものなのに対して、
中国は真逆ともとれる「性悪説」の
考え方が強い社会だろうと思っています。
プライバシーの問題など有無を言わさず、
万が一にも犯罪や逃亡という手段が一切取れない、
悪いことをしようとする人が現れても、
絶対にできない、或いはバレてしまう、
一切のスキを見せず、不正そのものが絶対に
できないように環境を徹底的に整える。
そのことがゼロコロナ政策の根底に根差しているように思えます。
ゼロコロナの問題点
コロナ禍初期には、武漢市の
ロックダウンがあったものの、
他国に先駆けて、新型コロナを封じ込め、
コロナ前の日常生活を取り戻していた
中国ですが、北京五輪・パラリンピックが
終了した3月以降、中国の新型コロナ感染者数
は急激に増加してきました。
オミクロン株のような「新しい問題」にも
旧対策のまま対応していくことに、
ゼロコロナ政策にも限界が見え始めたと
いう報道も見え始めました。
上海市のロックダウンをはじめ、
深圳や吉林も3月にロックダウンを行いました。
そしてロックダウンの問題点も
徐々に浮き彫りになってきました。
例えば、中国の一部の地域では
ペットの飼い主がコロナ陽性者と
なってしまった際に、ペットが殺処分
されてしまうということがあったようです。
また、殺処分とまではいかなくても
飼い主がコロナ陽性で隔離されている間、
ペットの世話をする人がおらず、ペットを
餓死させてしまうことがあったようです。
中国でもペットを家族同様に大切に考える
人も多く、このことが社会問題になっています。
また、毎日のようにPCR検査を受けさせられ
感染していないことを確認しないと出社
させてもらえない会社があり、毎日
1時間程度の行列に並んででもPCR検査を
受けているサラリーマンもいるようで、
大変な負担がかかっています。
また、ちょっとした食料品も買いに行けない
厳しい規制がかけられ、オミクロン株の
リスクと釣り合わないと思えるような、
隔離政策がとられていると注目を集めています。
もはや中国だけの問題ではない
それでも中国は、ゼロコロナ政策の失敗は
認められないと、何が何でもゼロコロナという
位の、強いこだわりを見せています。
かつて、「中国寄り」と批判を受けたこともある
WHOのテドロス事務局長が、中国のゼロコロナ
対策について、「持続可能ではない」と
はっきりと指摘し、それについて、
中国側も反論しています。
https://news.yahoo.co.jp/articles/a427205375fbb1b28159489adc2c331eaafe625b
yahoo! JAPANニュース 「ゼロコロナ」めぐりWHOvs中国
ロックダウンの影響で、世界のものづくりを
支え、成長し続けている中国経済が、
サプライチェーンの混乱や、需要減により
4-6月期は前期比の成長を下回って
しまうのではないかという懸念も出ています。
日本国内でも一部の家電製品、家具など
中国製の製品が入荷せずに品切れを
起こしているものもあるようです。
まさに当ブログでも取り上げた、
イアン・ブレマー氏の2022年の国際リスク
のトップ1位が「中国のゼロコロナ政策の失敗」
との予測が現実味をおびてきたような気もします。
まとめ
中国のゼロコロナ政策について
中国だからこそ成しえたコロナ対策
であることの理由を紹介しました。
コロナ禍で国による対策の違いや、
国民性の違いなどが浮き彫りになって
表れてきたと感じます。
当初は成功を収めたゼロコロナ政策も、
その限界が見え始め、度重なる
大都市のロックダウンなどで、
世界に影響力をもつ中国経済の
失速が心配されています。
中国のこれからの動向から目が離せません。